歯科医院専門の税理士、森川会計事務所。歯科医院の開業、経営は森川までご相談ください。
歯科医院の開業は厳しくなったという方がいます。
以前、東洋経済でも「5人に1人は歯科の年間所得300万円」と書かれたことがありました。(2007年4月28日・5月5日合併号)
また歯学部では学生に「今、歯科医院を開業しても食えない」と教える教授もいるそうです。
果たしてこの話は本当でしょうか?
私は「そんな話を鵜呑みにしない方がいい」と言っています。
もちろんある側面は当たっています。実際に年収300万円の人もいます。
でもそれはもうすぐ廃業を考えている医院や、軌道に乗る前の医院もあります。
そして正直に言うと「やる気」のない医院も含まれています。
決して開業して頑張っている医院の年収が300万円ではありません。

また「昔より儲からなくなった」という感覚は正しいですが、よく考えてみて下さい。
30年前と比べて、儲からなくなったのは歯科医院だけでしょうか?
自分の父親に聞くと、昔はどの業種も景気がよかったそうです。
私が子供の頃は高度成長期でした。
毎年の所得が伸びて、暮らしが少しずつよくなる気がしました。
これは日本全体の産業が伸びていったのです。
そして、その成長は平成に入るまで続きました。
その後バブルが崩壊して、日本全体の景気が悪くなりました。
土地の値段は何分の1になり、4万円近くあった株価も1万円前後になりました。(平成22年7月現在)
初任給も20年前とあまり変わりません。

日本経済全体が盛り下がったのであって、歯科業界だけが悪くなったわけではないのです。
他の業種を知らないから、歯科医院だけが悪くなった印象になるのです。
「昔よりは稼げなくなった」という歯科だけに限りません。
昔はどんなビジネスも儲かったのです。
現在「昔より儲からなくなりましたか?」と聞けば、ほとんどの業種の方が手を挙げると思います。
単に日本が昔より儲からなくなっただけです。
そして前より儲からないからって「開業をあきらめて勤務医になる」という考えはおかしいと思います。
私は歯科医院の開業をお手伝いしていますが、軌道に乗らない医院の数は20件に1件ほどでした。
つまり5%です。この数字をどう判断するかは先生次第ですが、一般の事業では脱サラをして新しく事業を始めても、3年すると10件のうち4件ほどしか残りません。
つまり60%はなくなっているのです。つぶれる可能性の方が高いのです。

そう考えると歯科はとても成功する確率の高いビジネスです。
実際見ていて開業前にやるべきこときちんとする人は、皆さん成功しています。
客観的に見ると、とてもいい職業を選択しています。

どんな場所でも何も考えずに開業して、食べていけた時代は終わりました。
しかし集客を見込める場所につくって、きちんとしたサービスをする医院は必ず成功します。

私は「歯科医院」というビジネスはとても素晴らしいビジネスだと思います。
きちんと儲けも出すことができますし、社会的地位も高い、人から尊敬されるビジネスです。
「歯科医院をやっています」と人に言うのを躊躇する人は、見かけません。
誇りを持って仕事をして、お金も稼げて、かつ尊敬もされる、そういう職業なのです。
そんな歯科医師という職業を選ばれた先生は本当に幸せだと思いますし、希望をもって開業に取り組みましょう。
開業することに二の足を踏んでいる先生がいたら、ぜひ思い切って開業することをお奨めします。
開業するのに適齢期はあるのでしょうか?
開業セミナーに出席される方は20代後半から30代前半の方が多く、開業するのは30代前半が多いと思います。
ある意味その年齢が適齢期といえると思います。
開業する年齢ではこうした意見もあります。
「若くして開業するよりはきちんと技術を身につけてから、開業する方がいいのではないでしょうか?」
もちろん何もできない状態で開業したら、患者さんに迷惑をかけます。一人前の技術がない時の開業は避けるべきです。
でも一通り出来る状態になればどうでしょうか?
もう少し技術を身につけてから開業するのか、その時点ですぐ開業するのか?
私は一通りできるようになれば、早い時期での開業をお奨めしています。
30歳でしたら充分開業してもいい年齢だと思います。
これは実際に開業を見ていると若くして開業した先生の方が成功しているケースが多いからです。
理由は3つあります。
1つ目は見た目の年齢が関係しています。
やはり若くみられる方が、患者さんの集客力があるのです。
先生の年齢と患者さんの年齢は比例していて、先生の年齢が若いと若い患者さんが集まりやすい傾向があります。
逆に年齢の高い先生は、患者さんの年齢も高くなる傾向があります。

2つ目の理由は、年齢が高くなってからの開業は「お金をかけたがらない」傾向があります。
「居抜きでしたい」
「家賃の安いところでしたい」
「出来るだけ借金はしたくない」
これは開業しても「自分があと何年続けられるか?」ということを考えるからです。借金も「あと何年返し続けなければいけない」というプレッシャーが大きいのです。
「早く借金を返したい」という思いから開業にお金をかけないのです。
通常の開業よりグレードの下がった内装だと、周りの医院と比べると厳しくなります。
患者さんからすれば先生の「懐事情」は知らないので、単に外観や内装を見て医院の実力を判断してしまいます。
内装が見劣りすると「先生の腕もこの程度かな」と思われがちです。

そして遅く開業する3つ目の理由は、先生の精神的な面にあります。
「自分は歯科医師として一人前である」という先生の気持ちなのです。
若く開業すると知らないことばかりで、右も左もわからない状態です。
自分で調べるたり、周りの人に教えを乞います。
「気恥ずかしい」なんて感じる余裕もないのです。
「何としても成功する」こうした思いで必死にやると、いつしか患者さんが増えていきます。
これは年齢がたつと失われていく傾向にあります。
「自分はもう一人前の歯科医師だ」こうした自信とプライドが悪い方に作用します。
年を取ると知識や経験もつきます。また自分の友達が既に成功しているので、上手くいった話を沢山聞きます。
技術的に同程度の友達であれば、「自分も同じくらい成功するだろう」と思う傾向があります。
でもこれは本当の経験ではありません。
勤務医としての経験は沢山あっても、開業医としての経験はゼロなのです。
話で聞くのと、実際お金を出してやるのは違うのです。
仲間の先生が開業した時と状況が変わっていることもあります。友人の医院では上手くいっても、自分がやるとダメな時もあります。
こうしたことを理解しないで開業すると、失敗していまします。
成功するのは必死にがんばる先生だけなのです。
開業したての頃に一番気合いが入ります。
最初に頑張らなければ、それ以上の時はありません。

また年を取ると、軌道に乗らない状態が続いても、軌道修正の動きが遅いのです。
「なりふり構わずやるのは気恥ずかしい」という感情があるからです。
「自分でビラ撒きするのは恥ずかしい」
「今更、年下の先生に教えを乞うのはできない」
こうした気持ちがでてしまうと、現状はよくなりません。

逆に遅い年齢の開業でも、気持ちが若い先生は上手くいきます。
「自分は開業医としては初心者だ」こうした気持ちで、開業時にどんなことでも積極的に行動すれば、開業に成功します。
私はよく「若いうちに開業して必死にやってみる。患者さんが来てある程度稼げるようになったら好きにして下さい」といっています。
年を取ってもがむしゃらにやれる人は、遅く開業しても大丈夫です。
ただ遅くからの開業は頑張らない確率が高くなるので、できるだけ若い時の開業をお奨めしています。
若い年齢と治療の技術とモチベーションを保てる精神力、この要素を持っているときに開業して下さい。
あなたは開業にどんなイメージを持っていますか?
最近は景気が悪い話が多いので、不安に思う人もいます。
しかし私はとても素晴らしいものだと話しています。
確かに開業したからといって、いいことばかりはありません。
患者様からひどいこと言われて落ち込むこともあります。
信じていたスタッフから裏切られることもあります。
逆に素晴らしいことが沢山あります。
患者様から「ここに来て本当によかった」
スタッフから「先生の所で仕事できたのが幸せでした」
こんなことを言われると、自分で医院をやって本当によかったと思います。
そして医院を成功させれば、経済的にゆとりが生まれます。
いいことも悪いことも全部受け止められるのが、自分の歯科医院を開業できるよさです。
歯科医院の評価が、そのまま自分の人生を表します。
会社勤めの人は自分がいくら頑張っても、会社が倒産したら終わりです。優秀で実績を上げても派閥争いに負けて出世できないこともあります。
開業は自分の人生を自分でコントロールすることです。
いいことも悪いことも全部自分で受け止められる、開業はとても素晴らしい選択だと思います。
以前「エンゼルバンク」というテレビドラマがありました(三田紀房 原作)
転職代理人が主人公の話で、とある高校教師が転職を考えてセミナーに出席します。
その時、転職代理人が言ったセリフは「今のあなたは転職の相場で、価値ゼロです」
そして「転職するなら30歳まで、35歳を過ぎると転職する市場がない」と言い放たれてしまいます。
転職は市場があって、その相場価値で決まるものだと教えていました。
実際の採用事情もこれと同じことが言えます。
一般的には30歳までが採用の基準になることが多いですし、専門性の強い業種でも35歳が目安になります。
こうした年齢で採用を判断される理由はなぜでしょうか?
一番大きい理由は「教えにくい」ということです。
採用するとその職場では新入社員です。その新人に仕事を教えることになります。
その時、自分より年齢が上の人だと教えるに気を遣うのです。
年下だと少しくらい偉そうに言っても、「自分より年下だからまあいいか」と思っても、年上だとそうはいきません。言葉を選んで説明するので、気を遣うことになります。
また新しく入ってきた側も素直に聞けないケースが多いです。「この歳になってわからないというのが恥ずかしい」本当は「教えてください」といえばいいのですが、それをいって質問しすぎると「今までどんな仕事をしてきたの?」と暗に責められる気持ちになります。今までの人生を否定される感じです。その為、わかった振りをしたり、人に聞くことをしなくなります。
若い時は知らなくて当たり前なので、普通に「教えて下さい」と言うことができます。経験がないので教える側も「本当に何も知らないのだなあ」とちょっと偉そうに言っても問題になりません。
そうした心理があって採用するときは、教育担当者より若い人を採る傾向があります。
歯科医院もこうした傾向は同じです。
助手や衛生士は20代を中心に採用していきます。
代診のドクターも20代から30代の前半を中心に考えます。
院長が自分より下の年齢のスタッフやドクターを採用します。
その方が教えやすいからです。

働く側からすれば、現在20代のドクターなら勤務先を探す時、見つからなくて困ることはありません。ちょっと探せばすぐ見つかりますし、待遇面を気にしなければ、失業し続けることはありません。
ただこれが40歳になると、そうはいきません。
もし今の勤務を辞めた場合には、次の勤め先があるでしょうか?
20代と違ってかなり苦労すると思います。簡単に転職が出来なくなります。もし転職できても待遇面は悪くなると思います。
その為、簡単に辞められないようになります。
転職しないで開業する場合でも、40歳を過ぎてからの開業は大変になります。

これは体力的なものもありますが、精神的な部分が大きいです。
これは「教えにくい」新入社員と同じですが、開業すると教えてくれる人が身近にいません。自らが教えてくれる人を探して「お願いします」と頼むことになります。
自らが動かないと教えてもらうことはありません。社内で聞くよりもっとエネルギーが必要です。
年齢が経つとこうしたことを頼みにくくなります。
「今までこんなことも知らなかったの?」と思われるのがイヤだからです。
若いときは聞けたことが、プライドが邪魔して聞けなくなります。
わからないことは素直に聞いて、恥ずかしくても受け止める姿勢が大切です。
そうすれば自然に成功します。
歳をとると、こうしたプライドと戦うのが一番大変かも知れません。

こうしたことを考えると、まだどこでも転職できる時期、すなわち転職適齢期までに開業を考えるのがいいのではないかと思います。
若くてどこの医院でも必要とされるときに、思いっきり仕事をして技術を身につけて、まだどこでも転職できるときに、開業するのです。
経験が足りなくて知らないことも沢山あるので、恥ずかしいという気持ちが沸きにくいです。そして早い時期に医院を軌道に乗せるのです。
転職適齢期は即ち、開業適齢期ということでもあります。
「保険診療ではなく自費診療を中心にやっていきたい」
都市部で開業される先生の中には、こういう方がいらっしゃいます。
保険点数は年々減少していく傾向です。制約も多いので自費診療を中心にやっていきたい気持ちはとてもよくわかります。
ただ私がアドバイスする時は「カルテ件数が200件になるまでは保険診療を中心にして下さい」と話します。
まずは保険診療を中心に患者様を増やします。カルテ件数が200件を超えてから、徐々に自費診療の患者様を増やしていきます。
この理由は、自費診療はあくまで一部の患者様しか行わないものです。
10人診ても1人決まればいい方です。
「自費診療はあくまで一定割合の患者様しか希望しない」と考えます。
そうすると自費診療を増やす方法としては「沢山の患者さんを診る」ことにつきます。
沢山の患者さんを診療して、その中から自費診療が発生することです。

開業間もない頃から自費診療を中心に考えると、どうしても強く勧め過ぎる部分が出てきます。
そうすると「あそこは高い」とか「金儲け主義だ」と噂を広げられる原因になります。
また軌道に乗らないうちは、資金繰りも大変だし余裕もありません。
そうした時期に自費診療を強く出すと、患者さんのために勧めているのか、医院の資金事情のために勧めているのか、と勘ぐられることもあります。

自費診療はどうしても波があります。200〜300万円入る月もあれば、ゼロの月もあります。保険診療のベースが多ければ、運転資金と最低限の生活費は賄えます。あせって自費診療を奨めなくても医院は成り立つので、ゆとりを持った診療ができます。
そのため一定のカルテ件数になるまでは、保険の患者さんを確保して、そのあとに自費診療に力を注ぐことをお奨めしています。
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